2014年08月31日

大航海時代



「ジパング発見記」山本兼一:著 集英社文庫 を読んだ。竹生島から帰って既に一週間、とても早いという実感。それでいて幻の様だ。
この「ジパング・・・」の主人公はザビエル達の宣教師です。戦国時代の小説には必ずや登場する宣教師ですが、彼らが主人公になった物語は読んだことが有りません。荒れ狂う海と遠大な時間を乗り越えることが出来る人間はとんでもない変人と思われます。一心不乱に前に進みゆく意志が無ければあの時代に辺境の地ジパングに辿り着くことは出来なかったでしょう。この一徹さも神ゼウスの成せる技なのでしょうか。航海術の進歩、殺戮の鉄砲、銀貨の流通など世界が平滑に、且つグローバル化されていく一時代に翻弄されていく人間達を山本兼一は綿密な資料をもとに宣教師の眼で描き、日本という特異な辺境を読者に提示しています。葉室燐も同じく「風渡る」で同じ時期を黒田官兵衛を主人公にして描いています。確かに日本人からするとキリスト教というのは理解できるようで、なかなか遠い存在でもあります。この宗教そのものが凡人の頭では理解しがたい難しいものに変ってしまったように思われます。もっとシンプルな筈だったのに。



今朝8月31日の静岡新聞から
「低反発枕草子」平田俊子 ・どこまでもノリのいい・・・ノリのいい文体でノリのいい会のはなしでした。しおんさんが入っているんだね。全員が多分このノリを会得なさっている、面白い会なのでしょう。いいなー!私なんぞは自称詩人とはいえ、偽称詩人だもんね。ノリには半拍おくれるんです。天然どす。

「この人この本」内田 樹の「日本の身体」。また読みたい本が増えました。グローバル化の渦中で固有の文化を持たない社会集団に成り下がらないための文化を持ちたいと切に思っているのでござる。
  


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2014年08月24日

再訪、竹生島



建築士会でまた、竹生島に行って来ました。セイシュン18キップなので乗り換えを随所で行い、えっちらほっちらとゆるーい行程です。乗り換えの豊橋駅で早朝にも関わらずMT夫妻が元気溌剌そのものだったので、パチリ。熟年夫婦の見本なのだ。



青い海と空、琵琶湖はうみなのだ。鵜も飛び自然そのもの、空に感謝して、句など浮かばない。



竹生島は急傾斜地なので、階段は急。老人の集団にも追い抜かれて、足が吊る。どこを撮っても景観は秀逸。



本堂の内陣外陣の結界の透彫り。眩暈がする程の技術と装飾で参拝者をトランス状態に誘い、祈らせてしまう。



又してもMT夫妻。参拝を終えて二人の神妙な歩調。姿勢の良さはダンスの賜物だね。



素晴らしき景観に寄与する自然と人工物の共存。上下左右と揺れながらのシークエンスは島のストーリーが表現されている。なーんちゃって



秀吉の極楽殿の唐門を付けた観音堂。総漆塗りだった時はどんなだったでしょう。



お決まりになった万城目学の「「しゅららぼん」の構図。



皿を投げる時に誰でも祈ってしまうシナリオ。SNさんにも祈ることがあったようです。



TKちゃんの祈りも鳥居の彼方(水神様)に届いた筈です。



何処の港でも見られるファンクショナルトラディション。機能的伝統。シンプルさがいい!



下船しての記念写真どすえ。あー腹減った。



焼鯖そうめん、焼鯖寿司。既に寿司は平らげてあるのだ。旨過ぎ。極めて内陸的食物である。



長浜の街なかで見かけたオサレな2CV。エスプリ満載の赤カエルです。salut!






  


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2014年08月20日

北森 鴻




「邪馬台」北森 鴻、浅野里沙子:著 新潮社 を読み終わった。蓮丈那智シリーズであるが、北森氏の絶筆だったものに浅野女史が筆を加えたものである。北森氏独特の場面の往復、時間の往復、そして奥歯にものの挟まった感じ(ミステリーではよくある話)は、この「邪馬台」では本領発揮と映る。話は邪馬台国なのだが、国が無い。何故?は読んでみれば判る。北森氏の著作に登場する人物達が出てきてあー!そういえば繋がっているなと納得する。キーワードが目くるめく多い。古事記、日本書紀、骨董、古文書、邪馬台国、卑弥呼、魏志倭人伝、出雲大社、大国主命、纏向遺跡、大和朝廷、南北朝、廃村、たたら製鉄集団、吉備津神社、日清戦争、チベット、三角縁神獣鏡、など数多くが絡まって物語を縦横に走りぬける。一つ一つを自分で色を付けながらイメージしていかないとどれがどれだったか解からなくなるけど、いつの間にか括られていく。国って何?俗にいう民俗学より歴史学に近い。まあそんなところにしておかないと、遠大過ぎて眩暈がしそう。

K2から頂いた「砺波そうめん」は今迄食べた中では一番気品のある「そうめん」でした。細くてぷりぷり。同じパッケージでも生産者が違うのだ。でもこの気品の高貴さは同じです。兎に角すごい!の一言。私の中では三輪の山本と双璧です。  


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2014年08月13日

浄瑠璃



「浄瑠璃を読もう」橋本治 著 新潮社 が読み終わった。読み終わったということで、全てを理解したという事では無い!、のだけれど、何故か少し踏み込んだ気がする。気がする程度である。まえがき、解説、を読めば作者(橋本治)の云わんとしている事がしみじみと感じられる。また各章でこの演目の特徴たる理由も理解できるかのようです。目次に「仮名手本忠臣蔵」「義経千本桜」「菅原伝授手習鑑」「本朝廿四孝」「ひらがな盛衰記」「国性爺合戦」「冥途の飛脚」「妹背山婦女庭訓」の八演目が提示されている。けれど、世話物は「冥途の飛脚」だけである。残り七つは歴史物。歴史物は武士、貴族。世話物は町民たちで、男女の情の儚くも悲しい話でこちらの方が私は好きですが、歴史物にも義理と人情の背景が織り込まれていてなかなか有無を言わせぬものがあるのだ。興味が高じれば是非公演に出向いてあの義太夫の声に圧倒さればもう、トリコ。発端の三浦しおんさんに感謝しています。9月28日は菊川の「アエル」。曽根崎心中と義経千本桜でごじゃる。



母の初盆で盆棚を設えました。初盆は皆様方の出足が早いので、10日に組み立てました。棚廻りが賑やかですが、これは遠州地方の飾り方で姉の嫁ぎ先があちらなのでその模様を呈しております。母ならどちらでも構わないと笑って云うだろうからこのようにしました。今日も昨日もお線香を上げに来てくれる人が多いので、これを書くのも途切れ途切れで付け足しています。あー有り難きことで御座候。


  


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2014年08月09日

マキメ



現在橋本治の浄瑠璃の本を読んでいるのだが、閑話休題でマキメを読み始めたら止まらなくなった。エッセイである。これまた抱腹絶倒!愉快とトボケでハイデッガーの死からは一番遠いと云える(まるで男子中学生の喜怒哀楽)。今まで読んだマキメの物語が随所に出てきてフーンそうなん?いや読んでなくとも面白い筈である。兎に角これでいいのだ。と納得してしまいました。しかしここまで優しく安易風に我らを誘い込む書き手は多分相当な国語力(話力)と尊敬している次第です。続編やらを探して読み続けたい人です。でもね、橋本治の浄瑠璃解説も捨てきれなくて、しがみ付いて読んでいます。浄瑠璃をこれでもか!という程懇切丁寧に解説してくれています。故にシツコサに疲れるのですが、これも当人の親切さだと思えば納得できるのです。「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」である。多分これを逃したら一生悔いを残すことになるであろうから。
   


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2014年08月04日

このミス&ひらがな




2011年このミス大賞だった「弁護士探偵物語」法坂一広:著 宝島社 を読んだ。難しい選評などは没個人的な読者から言えば、違う星の話であるから彼らの言語は理解しがたいと思えども「あー、こういう風に読む人もいるんだ」程度にしておく。下賤な読者は面白ければ、ページを捲るのが嬉しければ良い。ちょっとありえねーとか誰がこの言葉をしゃべってるの?、状況がみえねーが無ければ良いのである。小説の中身は実生活には役に立たない。じゃー何故読むのかって言えば、自分の下らない檻の中の妄想を想起するより、他人の格調高い妄想を覗く方が世界は広いから読むんです。
 無頼漢な弁護士が検察、警察機構を相手に事件の裏側に切り込む話である。ちょっと前のアメリカのアウトローを気取った弁護士探偵。このスタイルがもう古いよ!と思うか、永遠だよなと思うかは人それぞれですが、64歳の私は好きです。昔はこのような人間が居たかのような錯覚をしていますが、今も昔も居ません。只、単に憧れです。居たらいいのになーとかの巷の願望です。

「ひらがな日本美術史」5・6・7 橋本 治:著 新潮社は以前提示したけれど気になっていたので再読しました。何が気になっていたかは私にとって重要?な課題があったからです。応挙に端を発して、多様性の時代に入った近世(バロック)になると手法やら技術が多岐に広がって、見る側もその辺を考慮してからでないと意図が掴めません。その点で中世は解りやすいというか単純な吾輩の眼でも良さが見えてくるのです。でも確かに近世に入ると上手さや技巧はとんでもなく世界に抜きんでています。浮世絵が一番解かり難くて「すげーだろ」は解るけど、版画というフィルター故に作者が遠くなります。何だかんだいっても、北斎の上手さ、広重の日本橋は完璧だと思う。シリーズ6には角屋も載っているのだ。橋本治は実に面白い。  


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