2012年12月16日

「傾く滝」、新聞、ボントロさん

「傾く滝」、新聞、ボントロさん

「傾く滝」杉本苑子 著 講談社文庫 を読み終えた。
前回書いたように江戸歌舞伎の芸人とそれを取り巻く人達の波乱万丈の物語です。とても緻密に組み立てられた話で、読者も読み落としなど許されないほど事件は展開してゆきます。現代の歌舞伎界に照らし合わせて、江戸時代の歌舞伎界を知るのには絶好の本です。主人公は彦根藩での不倫による殺傷事件により敵役になった浪人、宮永直樹と同性愛の相手の市川団十郎なんだけど、脇役の描き方が素晴らしいので、もしかしたら、貧困だけど役者を目指した駒三かもしれない。破天荒で自由奔放な芸人が、芸に突き進む故に破滅の道を進んでしまう親と異母兄弟そして本妻、妾達の愛憎が切ないのだけれど、前回の芸人、三亀松も同じで、芸のために人生を全てうちこんでしまう辺りには、感動さえ沸きます。最後の辺りで あー と声が出てしまいます。

「傾く滝」、新聞、ボントロさん

例によって日曜版の晶子百花繚乱と書評:等伯です。
与謝野晶子も自由です。自分自身を曝け出します。お嬢様育ちが市井の日常にしがみついて日常を謳っても雅な文体から離れず、堂々と自分自身を開示します。これは情熱と知性に自信を持っていたからだろうと思います。強いね怖いくらい。
 日経新聞に連載されていた「等伯」が本になった。あの魅惑的な挿画は?って気になりました。切り抜きを大事に持っています。人の表情に引き込まれる画です。とにかく「松林図」に至る等伯の人生は策略と陰謀に掻きまわされて苦悩の上に出来上がった画だと思うと、見方も変わってきました。しかしながら、確かにもう一方でマイルスのミュートを付けた音が聞こえてきそうという評にも頷けます。すごい画です。軽い言い方ですがモダニズムです。

「傾く滝」、新聞、ボントロさん

先週に引き続き稽古があったので、ボントロさんのベッドにお邪魔してきました。紅葉が見たいと言うので、先生と一緒にベッドから車椅子に二人がかりで載せました。なにせ老人と違って重いの何の。介護人は不自然な姿勢を強いられながら病人の世話をしていると思うと頭が下がります。内の母は軽くなってしまったけど、家内は悩んでいます。ボントロさんは紅葉を見ながら あーきのゆうひーに を口ずさんで季節の移り変わりを感じていたようです。倒れてから一年になります。いつの日か一緒に何処かへ行きたいなって思いました。

次はソロモンのⅡなのだ。



Posted by 新茶 at 22:38│Comments(0)
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