2013年03月03日
円朝の女と養老先生
「円朝の女」松井今朝子:著 文春文庫
まず、この本全体は語り口調なのである。それがまた、すんごく上手い。本当の落語を聞いているかのようなリズムを読み手に強いるのであるが、これが快感。高座の前で聞きながらシーンを頭に描いている状態である。明治の落語家「円朝」の付き人が円朝に係わる女たちを縦横無尽に語ります。なかでも秀逸なのは、「円朝の娘」です。他は、全体のながれをみても、この娘のことを書くための伏線ではないかと思わせる程この娘:せっちゃんの話はグンときます。だからといって、他はつまらないのではなく胸を打つ話の連続です。今ではこの中で語られる様な女性や人間たちは存在しないのでしょうが、この様な人間たちの生き様は確かに我々を魅了させてくれます。
これを書いている途中に日曜美術館の時間になったので中断して、キャパの特集を見ました。モノクロ写真の奥深さを見た気がしましたが、それが深すぎて時代はこれを隅に追いやってしまったようです。今のこの時代の行き着く先はドンドン平滑になって、スーパーフラット。少し角のあるものや、味や匂いの有るものは排除されて行きます。追いやられた日本の文化も然りです。こんな風に時代は変わり、進化していくのか。
左今朝の養老先生です。これまた深いテーマです。寝ると起きることの不思議さが語られています。こんな単純なことがまだまだ生命科学の中で解明できないことがあるなんてことが愉快と云えるほどです。終わりに、科学は意識の一部分。だからすべてわからなくても当たり前。私はそう思っていますけど…。っていうのがまさしく養老先生らしくてニカってしてしまいます。眠りの遺伝子の注釈も面白い!
Posted by 新茶 at 10:40│Comments(0)