2014年07月31日

哲学者の密室



「哲学者の密室」笠井 潔:著 創元推理文庫
積んどくの一冊。あまりの厚さと哲学がらみだということから脇に除けて置いたけど、まあ克服できるかもしれないと箍を括って読み始めました。基本的にミステリーなので面白いところも有り、なにを言っているのか解らないページもありましたが、うすらうすらわかったような気がしました。その時はね。いまでは全く解かりません。大体に於いて1000ページを超しているんだから私の海馬では未消化でした。厚さ47mmです。ネットで書評を読むと、いい本だと皆さん褒めていますから、私の能力はそれに追い付いていないだけです。だからと言って、今更羨ましくも有りません。本の1/3はその哲学教本ですが、それを抜けば結構グイグイと興味深く読めました。パリで起こった殺人事件と三十年前のナチの収容所の事件が絡み合って、謎は色んな推理が展開されます。そこで題名の密室なんです。どんなトリックが開示されるか、読者は彼方此方に翻弄されて「一体どうなっているんだ」と何回も呟きます。1000頁にも亘ってね。読後は極めてスッキリですよ。時間と暇があればこんなミステリー本もあるんだと言えるのかもね。



佐野さんから事務局経由のひまわりがぼちぼち咲き始めました。毎朝水を遣っています。植物は死の哲学など無い世界で、生きることを謳歌して花を結びます。純粋ですね。



  


Posted by 新茶 at 10:19Comments(0)

2014年07月20日

「橋ものがたり」



「橋ものがたり」藤沢周平:著 新潮文庫
あーだこーだと語っているけど、「橋ものがたり」を読んでなかったの?と言われそうですが、その通り。この短編集は市井の人々の情感、いや人間のというべき、生きる根底の人への思いの形をこれでもかという程に描いています。落ちてしまって、抗いきれない貧苦のなかでも人は誰かを信じたり、恋したりと、情熱を生きる故に燃やします、橋を舞台にして。橋が何かの転機であったり、結界であったりした時代ではあるけれど、節目を現す地点や舞台であったことは確かです。今の時代は節目も結界も曖昧で、消滅して見えない都市に変わってしまった様です。
 


先日事務局から頂いた水野朝顔先生の「狸々の舞」が朝日によろめきながら咲いていました。どこが狸なのかは見当が着きませんが、この妖艶さには騙されないぞえ?



無名の朝顔です。さっぱりとした水色は6:30のラジオ体操のようです。



真白い木槿もここぞと咲き誇っています。草木の生きる術は季節の節目に逆らわずに、夏になって表現の極致を迎えています。
今日もお茶の稽古に行って来ます。この稽古というのも日常の中に節目を作ってくれています。平茶碗が苦手です。  


Posted by 新茶 at 11:00Comments(0)

2014年07月16日

銀の匙



「銀の匙」中 勘助:著 角川文庫
学生時代に読んで、懐古趣味ジャン、変わったボンボンの耽美主義ではないかなどと斜に構えたみ方をしていた自分を思い出しました。逆にこれほど素直に共感した文章も珍しいし、句読点が少ないにも関わらず、美しい文と感じてしまうのも、何故でしょう。幼少期から十七歳までを懐古記述し、巷の口語体も方言を使いながらも美しい雅とさえ思える気品がある。音の響きまでの心遣いが感じられます。それが全編に亘っている。名著といわれる所以ですが、この齢になって再読して理解した次第です。にほんごの芸術の一つです。フィルターを捨てて、一字一句を丹念に読み、ジワジワくる涙も味わって下さい。

  


Posted by 新茶 at 09:02Comments(0)

2014年07月08日

再読:赤ひげ



「赤ひげ診療譚」山本周五郎:著 新潮文庫 を再読。前回「お腹召しませ」を再読したので、赤ひげも読んでみた。昔読んだ感想とは違い各部をくっきり思い描けたように思える。八編の連作で主人公の保本登が過酷な経験を積んで成長していき、その先は師である新出去定(赤ひげ)であろうことが読み取れる。この八編の事件の提示だけでこの保本の経験を描いている、もっと膨らませたり、数々の事件を織り込むのも可能なのに、八編で結んでいるところがきっぱりしている。ところでこの物語は江戸時代の医療機関の医師を描いているのだけれど、医師という仕事がデジタルでなくて、リアルなアナログであることも語っている。実際の仕事はデジタルがどんなに進歩しても、まさしくアナログであり、人間の感情や肉体と向き合わなければ解決しない仕事だってことです。どんな仕事もこのアナログに対処出来なければ一つも進まないことです。もともと私は医師になれる資質は持ち合わせていないのですが、病気の肉体や、血、排泄物等と直接に向き合わなくて良かったと思っています。強靭な精神と頑強な肉体を要求されるんですね。医療はアナログの極限です。この本を読んで医者って本当にエライナーと思いました。看護士さんも同じですね。表紙は安野光雅でした。人の形で解りますね。

  


Posted by 新茶 at 21:15Comments(5)

2014年07月07日

「お腹召しませ」



「お腹召しませ」浅田次郎:著 中公文庫
 何処かのブログで「えー!」と、驚いたので、再読しました。時代小説を浅田がどんな風に書こうとしていたかをプロローグで、また巻末でも語っているので私なんぞは、大変溜飲の降りる有り難い本だと思っていました。人として日々感じる小さな「そーだよな」を、虚と実を巧みに操りながらも納得させられて危うくも倫理観までも溜めこんでしまっています。軽いじゃんと言われようがいいんです。深読み出来なくても、単純に操られながらも、他人からすれば私の持つ倫理観などは、その辺に漂う埃程度の影響しかありませんから、素直に納得しながら読みました。逆に気に入っていて、是非と云えるほどのおすすめの本です。竹中平蔵の解説も微笑ましく思いました。6編の短編集で、どれも秀逸。再読だからといっても「あーうまいね」とかため息が出てしまいます。「御鷹狩」は涙物。



静岡新聞の「親鸞」の最終回でした。死んだからといって奇跡などは起こらず普通の人間として死にます。これが親鸞なのです!。絵は登場人物のオンステージで幕引きでした。名札が付いているけど。絵で覚えていて、越後に流れ着いたころを思い出しました。山口晃氏の巧妙な線画は良かったです。感謝!

サッカーはベスト4。ネイマールのいないブラジルはどうなるんでしょうね。結局ヨーロッパ2.ラテンアメリカ2でこれらのチームはやることなすこと全てがうまいんです速いんですスポーツなんです。彼らは瞬間のプレーです。三拍子やシンコペーションで、日本の間を置いた二拍子のリズムでグローバルのステージに上がろうとすれば置いて行かれるのは目に見えています。ガラパゴスでもいいことがあるのかもしれない、という淡い希望が蔓延している。  


Posted by 新茶 at 08:55Comments(0)

2014年07月03日

「フィッシュストーリー」



「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎:著 新潮文庫
伊坂はやっぱり走り続けています。若い時にしか感じられないものを描くからです。集録されている4編が全てその時間が事件の発端だったりします。走り続けながらもユーモアや洒脱に溢れているから読者を置いてけぼりにはさせない思いやりもあるんです。「動物園のエンジン」短編なのに謎を書き物故の手法で読者を戸惑わせる。「サクリファイス」は生贄のこと。クールな泥棒探偵の黒澤登場。地方の儀式と未来とが絡まり合って面白かった。「フィッシュストーリー」はロックの世界と思いきや、輪廻転生かな?DNAのコピーの結果故の奇跡もある。「ポテチ」はとてもポテチです。黒澤がまた出てきます。私が伊坂をイメージしているのはこの様な物語です。親子の絆とか人の縁とかヒューマニズムが根底にあればなんでもいいんです。

キューピーのCMでやっているズッキーニのマヨネーズ炒めが我が家では定番になりました。そう、おかぴー畑の産物です。巨大なズッキーニも時には現れます。我が家の畑はゴーヤに占領されているので、ナスも有りません。だから有り難いんです。カレーにも入っているし、今度は麻婆ズッキーニをやってみるつもりだ。  


Posted by 新茶 at 11:37Comments(0)