2013年03月14日
茶人物語
「茶人物語」読売新聞社編 中公文庫
母が入院して、昨晩付き添った。時間を弄ぶのが辛くて読み続けた。痰が肺に溜まって血中酸素が半分まで落ちて、低体温になった訳である。吸引を施して今朝体温も36.5度に回復して、血中酸素も100%になったので、私は自宅に帰ってきた。病室に居たからって私が処置をするのではないけれど、時々手を握ったり、顔を撫でたり、話しかけたり、しただけである。でも本人は病院に居る事は判っているらしいので、何かが不安なのである。7階にはそんなお年寄りが大勢います。不安で、寂しいのは誰でも同じだけど、手を握ったり、言葉を掛けるだけで和らぐものなんですね。気丈だった母もしかりです。
本に戻って、歴代の茶人48人の話を逸話も交えながら、茶の起こりの陸羽から、近世の岡倉天心までを述べています。茶の湯が不立文字による伝承なので、いろいろと誇張されたり歪曲されて我々に伝わってきているのですが、その人たち其々の個性ある茶はそれなりに見えてきます。心に残ったのは、小堀遠州の歌で、「春は霞、夏は青葉かくれの郭公、秋はいと淋しさまされる夕の空、冬は雪の暁、いずれも茶の湯の風情ぞかし」という歌です。「枕草子」そのものだけど遠州の茶なんでしょうね。それと、これらの大勢の茶人たちが常に道具を見せびらかして得意になる茶に悲観していたことです。いつの世も同じです。茶の湯ってコミュニケーションだと思うけどね。
Posted by 新茶 at 11:45│Comments(0)