2013年06月27日
北 重人
「夏の椿」北 重人:著 文春文庫
既に亡くなられた作家だそうです。建築家、都市計画家でもあったそうです。非常に細かに配慮された記述で読者は丹念にコツコツと劇中を歩んで行く事が可能です。場面がしっかり組み立てられているんですね。上手いんです。だからといって構築過ぎるのかと言えば、そうでもなく感情の起伏の度合いは心臓をドギマギさせるほど豊富です。話は時代劇。甥の死因に疑問を持った侍が知り合いと調べを進めるうちに、辿り着いた人間たちの生き様や、世情(田沼の失脚と米騒動)に翻弄されながらも、悲しみをともなった解決に辿り着く。と言ってしまえば簡単なんだけど、そこの面白さの肝心なところを上手く書けません。情景や登場人物との描き方は、都市計画家そして建築家らしく丹念でありながら、くっきり鮮明に感情を交えながらも情景にしています。登場人物の絡みも実に計算された演出だと思いました。次が読みたくなる作家ですが、この後数冊しか出ていません。非常に残念です。
Posted by 新茶 at 11:24│Comments(0)