2015年09月21日
阿倍仲麻呂
「安倍清明伝」平成講釈 夢枕 獏:著 中央公論新社
文芸春秋社の安倍清明のシリーズとは別です。ワトソン源博雅は登場しない清明伝です。清明の生まれる前からの話で、奈良時代の阿倍仲麻呂の登場です。そうです、ここでは、清明の祖先が仲麻呂なのです。「天の川ふりさけ・・・」の仲麻呂はいろいろな逆境に遭遇して還って来れなかった人。真備は還ってきた。その辺の唐の時代、楊貴妃、元宋の時代であります。と言っても全然知りませんでした、中国の歴史はね。でもこの本を読んで少ししりました。遣唐使のことも。ためになります。あーありがたや。
この本の語り口は講釈、講談調です。故にすらすらと音で読むうちに終わってしまいます。ストーリーは仲麻呂の賢い故の苦労と使命。そしてそれを救おうとする吉備真備。その裏で暗脈する怨霊。中国が舞台ともなりますとスペクタクルな映像が脳裏に描けます。そして子孫の清明がどのようにして都に登場し、蘆屋道萬といかなる因縁がつくられたのかが、詳細に語られるのである、講談調でね。夢枕の物語は苔脅し的な割に内容がタンパクという印象があるのだが、実はこれを重ねるうちに遠大なテーマがジワジワと熟成されているのである。
Posted by 新茶 at 09:02│Comments(0)