2015年10月01日
なまなりひめ
「生成り姫」陰陽師 夢枕 獏:著 文春文庫 でした。この平安時代の劇が現在も宇宙の何処かで生々しく進行しているかのように思えてなりません。劇中の登場人物たちが、現在の私達と同じ心持で物事に接しているような気がするのは、夢枕の術です。でも多分時代がいくら変わろうとも愛憎の心理は同じなんでしょうね。医学と同じく極めてアナログなんです。生身の人間の体と心の様はデジタルにならないのです。そして普遍なのです。恋に破れた女が呪いをかけて未練がましくも憎き男を息絶え絶えにしてやろうと鬼になって殺そうとする。それを救おうとする晴明、そしてその気のふれた徳子姫に心をよせた博雅。愛と憎しみはグルグル渦を巻いて成り果てるのでござりまするデデント、デンデン。今迄の事件ごとの短編を、一つの「鉄輪」を元に長編に仕上げて上手い!と云わせる物語になっています。鉄輪は謡曲のカナワです。五徳です。表紙の画の頭に付けていますねー。眼には見えない、人の恋焦がれてしまうという感情をあの五徳で表現するというのも、なんというか言いようのない日本ですね。表紙もよろしおすえー。
Posted by 新茶 at 07:59│Comments(0)