2015年04月02日
木内 昇
「茗荷谷の猫」木内 昇:著 文春文庫 を読み終わった。もう一度読み返したくなる本でした。しみじみ読みました。表紙の猫のようにのっそりと読みました。この表紙の画はすごーくいいです。強調する時には伸ばします。うーんまいじゃんとかね。藤沢周平の物語を読むと、情景が文字、語りの廻し方に気付かずに、そのまま頭に描いて、ずんずん映ってきますが、木内昇さんの文体は字面や音の響きが美しく、それを噛みしめてから情景に入っていきます。その情景も、ある部分では日本画のように雲で覆われてピントは定かではありません。朦朧体です。でもその描く朦朧体の情景こそ、まさに日本なのです。九編の短編で明治から戦後、江戸から東京へと町が何かの情を繋ぎながらも、失われていく風情と云うものを描いています。久々に日本を描く作家を読んだと思えました。素人でも「名作だね」と云える本でした。またゆっくり読もう。
Posted by 新茶 at
08:56
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