2014年02月18日

桜ほうさら



「桜ほうさら」宮部みゆき:著 PHP研究所

この表紙の如く柔らかく希望に満ちた物語である。内容は打って変わって事件が転々と移り変わり主人公の笙之助は翻弄されるのであるが、やはり若さゆえなのか、何処かに希望の光が、周囲の人達の人情味も加わって笙之助のじんせいを大きく揺るがせた問題も紐解けててゆく。人を慈しむことこは生きる為の希望であると宮部は語っている。600頁もあるけど読み始めたらアッという間に終わることを確約します。
 時代物小説に出てくる言葉は現在では国語の教科書やテレビのクイズ番組にしか登場しないけど、とても日本の時間を感じさせて汚い事でさえも美しい響きや音に変えて美しいとさえ思える。例えば、誑かす(たぶらかす)、白地(あからさま)、汚名を雪ぐ(おめいをそそぐ)符丁(ふちょう):記号、唐紙(からかみ)、お咎め(おとがめ)、落首(らくしゅ):落書き、腕(かいな)、些かも(いささかも)、忝い(かたじけない)、お暇時(おいとまどき)、鄙の片隅(ひなのかたすみ)など一、二頁の中に出てくるのです。なんというかこれらの言葉により、江戸時代の時間や空間、匂いや色合いの情景まで頭で描くことができるのです。町人には町人の、上方には上方のあらゆる場面で変化しながらも雰囲気を伝えることが可能なんですね。こういうのを「いいね!」というのだ。本というのは諦めないで読むと、とてもいいことが体の中に宿ったような気がします。
 次はまたまた、ストイックな葉室 麟なのだ。ドタバタ万城目 学もまたその次になってしまうけど、美味しいのは後回し。  


Posted by 新茶 at 08:51Comments(0)