2013年06月11日

「蛍火」



「蛍火」蜂谷 涼:著 文春文庫 を読んだ。舞台は明治後期の小樽。表紙や題から想像して裏悲しい物語であることが一目瞭然で、確かに涙を誘う物語である。しかしながらそれだけでは終わらない強烈な伏線や、力強さを時間の軸を絡ませて感動を生んでいる。主人公の染み抜き屋の「つる」の壮絶な人生を描きながら、他の登場人物の人生も小樽、いや北海道という特殊な地方が背負ってきた痛ましい歴史(幕末の動乱期から北海道の開拓への意味)に重ねて語っている。何か月か前にこの小樽の町の海岸通りを通り過ぎた時に、修学旅行の子供達が大勢キャーキャーと行列していたのを思い出したけど、多分全員この北海道の裏の歴史の事は何一つ知らずに騒いで居たんだろう、でも、いつの日かこの子供達もこの小樽、北海道の壮絶な歴史を知って小樽を再び思い出して欲しいと思った。歴史から逃げないで読んで欲しい物語です。連作短編の物語ですが、展開が素晴らしいのでじっくり味わってみてください。なお、蜂谷涼は解説を読むと女性である。  


Posted by 新茶 at 09:08Comments(2)