2013年10月14日

山本一力



「いかずち切」山本一力:著 文春文庫
江戸時代の金融、経済のシステムを理解していないと前に進みませんが、読んでいるうちにナールホドとなんとなく理解しちゃいます。そのまた裏の社会の人間達が繰り広げる騙し合い。そして信じ合う仲間たち。そう倍返しの物語です。金を持てば騙し合いが始まるんです。如何にして騙して金を手に入れるか、そして金の亡者になるか、その亡者を如何にして貶めることが出来るのか。面白いですねー。500ページにも及ぶこの物語はずーと眼が離せませんでした。登場人物の描き方が上手いし、背景も頭で描き易いし、読み手は劇画を書いてしまいます。いきいきとした市井の人間達が江戸の社会の主人公であったことは確かなようです。  


Posted by 新茶 at 21:39Comments(0)

2013年10月14日

文楽「ひらがな盛衰記」



また今年もグランシップの文楽公演を観に行ってきました。
 みんながみんな戦っていたり喧嘩をしたりしていて、怨念や恨み辛みの感情が溢れていた時代、また不条理の連鎖の渦中に生きていた人々の癒し(人情味:時代錯誤の古い言葉かも)がこの人形浄瑠璃のストーリーに映し出されている。太棹をバックにした太夫の絶叫が観客の心情とシンクロする。LIVEとはどんな時代にも芸能の原点でもあるんですね。去年の文楽の時も書いてたけど、太棹(三味線)の撥さばきはロックその物です。公演前のワークショップ(三味線)も非常に面白い話が聞けました。間合いリズムの感性は相手を読むこと、共感することを楽しまないと成立しないんだってこと。現代はニセのウワベの共感で溢れているのかも・・・いや昔も今も同じかな?。「ひらがな盛衰記」は子供の取り違えに段を発した話しですが、全体を通して観た方が解りやすいかもしれない、でも充分に面白みは熱演ゆえに私には伝わりました。

昼はお茶の稽古に行って来た。釜が真ん中なので、長板の中置です。中心に釜を据えるという、斜に構えないで真正面を向くという、腰の据わった美学は武道に近い手前なのかな?と勝手に思い込んでいます。ゆらゆら揺れ動く視点の定まらない拙者にはピシッと楔を打ち込んでいる気がしました。がしかし、栗きんとんの菓子を口にした途端に気は緩んでしまいました。前段の文楽と共に、日本の秋のすばらしさを味わった一日でした。

  


Posted by 新茶 at 09:08Comments(3)