2012年05月27日

「てらこや浪人源八先生」飯野笙子:著 コスミック・時代文庫


用心棒だった浪人がとんでもない解決方法の末に寺子屋の先生になる。、いろいろな事件や微笑ましいストーリーの展開が連なった後に彼は彼なりに解決してゆく。完璧ではないが、彼なりにである。そこがいい。江戸時代の庶民の長屋暮らしが心情豊に描かれていて、涙を誘いながらも気丈に生きる庶民を愛おしさを満載にした筆で表現している。長屋暮らしなんて本当はとても辛かったんだろうに、どこかに希望が見える。子供が希望の象徴として登場しているんだと思う。なぜか時代物は飽きないのだ。山本周五郎の「さぶ」や「季節の無い街」他も庶民の生活のなかにある、権威や格式から抜け出た大らかな生き様に共感するのだ。表紙は時代物では右に出るものが居ないほどの、村上豊である。
  


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2012年05月27日

YOMOっと静岡

本日5月27日(日)静岡新聞の日曜版別冊です。この中に「ようこそ劇場へ」宮城聰が選ぶ名セリフっていうのが有りまして、本日は曽根崎心中:近松門左衛門のセリフ「あれ数ふれば暁の、七ツの時が六ツ鳴りて、残る一ツが今生の、鐘の響きの聞き納め」がテーマです。もうこの世の中は永遠に変わらないかと思える江戸の世にあっても、恋する気持ちが有れば世の中が変わって見える、一つの鐘の音も輝やいて、時間が止まったかのように聞こえる。時間も空間も違って見えてくる。恋とはそのように現世を変える魔術だったのかも、いや自分と他者を見つめるという点では、現在も同じだ。なかなかいいコラムでした。  


Posted by 新茶 at 10:31Comments(0)