2012年12月09日

三亀松


「浮かれ三亀松」吉川 潮著 新潮文庫 を読み終わった。
昭和25年生まれの私には馴染みの無い都々逸という芸能で壮絶、破天荒な人生を全うした芸人のお話でした。芸人と庶民は違うということをまざまざと見せてくれています。全てが粋でなければならないという信念を貫き通した三亀松でした。とんでもない逸話が多すぎて、兎に角びっくりです。それにもまして、演じる芸が抜きんでていたという話しです。しかしながら、私が感じたのは、時代です。その時代々で芸能はかたちを変えてしまったという事です。現代では都々逸や新内を街で聞くことなど皆無です。多分そうでしょう。情報のステロタイプ化で直に舞台芸能を見る事など稀になってしまいました。知っているとしてもテレビで見た程度で、直に接したことなどない筈です。もしかしたら架空の人間を観ているのかもしれないね。本来のアナログ的芸能というものは今では確かに無くなってしまったといえます。寂しいことだけれども確かです。解説のなぎら健壱さんが語っていることが的を得ています。能、狂言、文楽、歌舞伎、長唄、常盤津、小唄、端唄、清元、都々逸、新内、木遣り、落語、太神楽、田楽、漫才、とまだ知らないものがあって、重複しているのも有るのかもしれない。要するに知らないんです。だから少しでも機会があれば観に行こうと思う。消えてなくなりそうだから。表紙の画は小村雪岱を髣髴させる蓬田やすひろです。いいですねー。  


Posted by 新茶 at 09:56Comments(2)