2013年01月11日

ねじめ正一



 「眼鏡屋直次郎」ねじめ正一:著 集英社文庫 
シーボルトの事件と時を絡めて眼鏡屋直次郎の恋愛、痛快ミステリーである。江戸と長崎、そしてその道中で起こる事件も痛快に切り抜ける。ねじめ正一は初めて読んだが、文章が淀みなく流れ、シーンをくっきり描く文体である。というのは心情との描き方に唐突な切れ目を入れないからなんだと思う。読者の気持ちを断ち切ることなく運んでくれる。上手いって云うんでしょう。今時の作家の文章はなにがなんだかわからなくて場面がスパっと切り替わってしまうのが多いけど、若い人っていうのは疲れないんでしょうね、いや、かっこいいんだろうね。年を取ると目まぐるしく場面が変わったり時間が逆戻りしたりすると付いていけないんだよね。読者にやさしい作家がいいね。若ぶって今時の作家に挑戦してみる気もすこしある。尚、実在した人達も登場しているらしいので、随分と綿密な資料を基に描かれているという解説がある。作家ってすごいですね。

 今朝の新聞の「紫匂う」のカット
この絵の背景の色には薄紫を塗りこんでいる。薄紫の匂いってどんな匂いなんだろう。匂いを言葉で表すなんてのは粋じゃないんだろうね。匂いは兎に角フェチ、色艶に関係しているから文字では無粋ってなことかな。
この蔵太の湯飲みを跨いだ妻への眼差しは優しさなのか、嫉妬なのか、はたまた策略なのか意味ありげですね。
日本画っていうのは単純なようで細心の注意力を必要とする絵なんですね。

昨日の閲覧件数がすごく多かったけど、日土小学校に関心がある人って随分といるんですね。  


Posted by 新茶 at 09:13Comments(4)